本年、精神科領域のグローバル診断基準である「精神障害の診断と統計の手引き(通称、DSM)」が第5版に改訂されました。
そこでは、これまでのアスペルガー症候群、自閉症、分類不能な広汎性発達障害などの数種類の診断名が、「自閉症スペクトラム障害」と一括して分類されることになりました。
一方で、「多動・注意欠陥障害(ADHD)」については、これまで通りです。
これまでも、発達障害の参考書籍は、本ブログで良書を紹介してまいりましたが、発達障害の病因、診断、治療については、まだまだ発達途上にあると言わざるを得ません。
今回ご紹介する書籍は、ADHDに関するもので、星野仁彦「それって、大人のADHDかもしれません」(アスコム)です。
本書では、ADHDと考えられる世界的な偉人、著名人(坂本龍馬、トーマス・エジソン、織田信長、ベートーヴェン、ベンジャミン・フランクリン、リンカーン、アインシュタイン、ココ・シャネル、ピカソ、トム・クルーズなど)を例に取りながら、ADHDについて分かりやすく解説されています。
特に難しいのが、アスペルガー症候群とADHDの鑑別診断ですが、本書では、以下のように述べられています。
「ここが違う、ADHDとアスペルガー症候群」
・過集中:共通点(興味のあることに熱中して、時間を忘れたり、オタク的なのめり込みは共通)、違い(ADHDには、アスペルガー症候群によくみられる「同じ動作を果てしなく繰り返す」癖、「におい、肌触りなど特定の感覚刺激への強いこだわり」はない)。
・不注意:共通点(不注意症状の現れ方は、ADHDもアスペルガー症候群もよく似ている)、違い(「人への共感」があるかどうか。ADHDは、人に失礼でマナー違反だと分かっているのに止められない。アスペルガー症候群は礼儀、マナー意識そのものがない)。
・衝動性:共通点(ADHD、アスペルガー症候群ともに、場にふさわしくない衝動的、失礼な行動~突然わめく、暴れる、人を叩く、ける、割り込む、などの行動が見られる)、違い(ADHDは、感情を爆発させるのは大人として恥ずべきことだと、分かっている。アスペルガー症候群には「相手に失礼」という概念がない。反射的にパターン化した行動が出る)。
・癇癪(かんしゃく)とパニック:共通点(共に、自分の思い通りにならないと混乱しやすく、癇癪やパニックを起こす)、違い(ADHDでは感情をストレートに噴出。早とちり、勘違いでキレることもある。アスペルガー症候群では「犬の鳴き声→ごう音と感じてパニックに」など、知覚や認知のゆがみから瞬間的に反応したり、急な予定変更や予想外の出来事に対処できなくて、癇癪やパニックを起こす)。
などなど、参考になる知識が盛りだくさんです。
「知は力なり」で、とりあえず、情報を入手することで、問題解決の糸口が見えてくるでしょう。
それって、大人のADHDかもしれません (アスコムBOOKS)/アスコム
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