現代日本社会では、「ひきこもり」が社会問題となっています。一般的には、「二十代後半までに問題化し、六ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が続いている」と定義されています。当院でもたくさんの相談を受けていますが、適切な対応が求められます。
そこで今回ご紹介するのが、斎藤環『社会的ひきこもり』(PHP新書)です。
本書では、ひきこもりのさまざまなデータが紹介されていますが、国のよってはひきこもりがないそうです。たとえば、フランスにはひきこもりがなく、家族がサポートしないので即ホームレスになるとのこと。ひきこもりが世界中にあるというわけではないのです。
本書では、金銭に関する三原則として、①小遣いは、十分に与える、②金額は必ず、一定にする、③その額については、本人と相談して決める、をすすめています。
私の臨床経験では、②と③はいいにしても、①については賛成できません。著者は「お金を使うことで社会との接点が保てる」という理由ですすめていますが、かえって、社会に関わらなくてもお金が手に入るのでますますひきこもってしまうというのが私の感想です。自由に小遣いを与えるのは、問題を先送りするだけです。
日本の「甘え」の構造が、本人の自立心を奪ってしまうのです。
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